
耳鼻咽喉科?頭頸部外科
診療内容
耳鼻咽喉科といえば、めまい、難聴の他、中耳炎、副鼻腔炎(ちくのう症)、扁桃炎、声帯ポリープなどの病気が真っ先にあげられますが、その他にも大学病院の性格として、喫煙と最も関連している喉頭癌(タバコとの関連は肺癌の約5倍と言われている)、飲酒と深い関連のある咽頭の癌(中咽頭癌、下咽頭癌など)、さらに入れ歯の慢性的な刺激と関連する舌癌、首のしこりとして頻度の高い甲状腺の癌など(このような耳鼻咽喉科領域の悪性腫瘍をまとめて頭頸部癌と呼んでいる)の悪性腫瘍の診療(抗癌剤や放射線、手術による治療)を行っています。このような頭頸部癌を主体に診療している場合には頭頸部外科と呼ぶ場合もありますので、私どもの診療科は耳鼻咽喉科?頭頸部外科と呼ぶのがわかりやすい(当科は2018年10月より、耳鼻咽喉科?頭頸部外科と標榜科名を変更しました。)と思います。このような病気の患者様に対して、QOLの改善を目的とした高度な医療を目指しています。
専門分野
頭頸部腫瘍、運動誘発性喉頭閉塞症(EILO)、中耳炎、人工聴覚器、顔面神経麻痺、小児難聴、甲状腺疾患、嚥下障害
関連リンク
- 和歌山県立医科大学耳鼻咽喉科?頭頸部外科のページ
(このページは耳鼻咽喉科?頭頸部外科の責任で作成されています。)
スタッフ紹介(2025年4月現在)
役職 | 氏名 | 専門分野 | 学会認定 |
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教授 | 保富 宗城 | 耳科学 頭頸部腫瘍 甲状腺副甲状腺外科 再建外科 | 耳鼻咽喉科専門研修指導医 頭頸部がん指導医 耳科手術暫定指導医 鼻科手術暫定指導医 |
准教授 | 玉川 俊次 | 頭頸部腫瘍 再建外科 甲状腺副甲状腺外科 | 耳鼻咽喉科専門研修指導医 頭頸部がん専門医 |
准教授 | 河野 正充 | 耳科学 小児難聴 感染症 | 耳鼻咽喉科専門研修指導医 耳科手術暫定指導医 |
講師 | 大谷 真喜子 | めまい?平衡医学、スポーツ医学 | 耳鼻咽喉科専門研修指導医 めまい専門会員 スポーツドクター パラスポーツ医 |
講師 | 村上 大地 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 鼻科学 | 耳鼻咽喉科専門医 |
講師 | 酒谷 英樹 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 小児難聴 | 耳鼻咽喉科専門医 |
助教 | 岩井 奈央子 | 甲状腺?副甲状腺外科 | 耳鼻咽喉科専門研修指導医 内分泌外科学会専門医 |
助教 | 金子 富美恵 | 耳科学 顔面神経疾患 | 耳鼻咽喉科専門研修指導医 顔面神経麻痺相談医 めまい相談医 |
助教?大学院生 | 伊豫 巧朗 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | 耳鼻咽喉科専門医 |
助教?大学院生 | 志賀 達也 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 甲状腺?副甲状腺外科 | 耳鼻咽喉科専門医 |
学内助教 | 塩﨑 貴斗 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | |
学内助教? 大学院生 |
溝端 和哉 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | |
学内助教? 大学院生 |
植田 凌 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | |
学内助教? 大学院生 |
森田 洋平 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | |
学内助教 | 平山 あゆ美 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | |
学内助教? 大学院生 |
岡田 拓真 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | |
学内助教? 大学院生 |
川端 康平 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | |
学内助教? 大学院生 |
北村 文哉 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | |
学内助教 | 要田 知新 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | |
学内助教 | 松下 絢華 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 | |
学内助教 | 森 優史 | 耳鼻咽喉科頭頸部外科一般 |
診療の特色、得意とする治療
- 本院では、聴力改善を目的とした鼓室形成術、人工内耳植み込み術、運動誘発性喉頭閉塞症に対する声門上形成術、喉頭蓋吊り上げ縫合術、喉頭蓋形成術、鼻副鼻腔疾患に対する内視鏡下鼻内手術、甲状腺疾患に対する内視鏡下甲状腺切除術(VANS)、頭頸部癌に対する微小血管手術を用いた形成?再建手術など先進的な治療を行っています。
- 臨床の特徴としては、オールラウンドな診療、薬剤耐性菌や免疫不全に伴う難治性?反復性中耳炎に対する免疫治療やレーザー鼓膜開窓術、中耳炎、小児難聴、顔面神経麻痺、腫瘍、甲状腺、運動誘発性疾患などの各専門外来による高度な診療を行っています。
- 当科には日本耳鼻咽喉科学会専門医が10名在籍しており、先に挙げた耳、鼻、のどの疾患、頭頸部癌の患者様の治療に実績があります。
専門外来の紹介
月曜日から順に紹介します。
- 頭頸部腫瘍外来(月曜日)
頭頸部腫瘍外来では、腫瘍患者が長期間の退院後にその経過をフォローする外来で一ヶ月に一回ほど通院してもらいます。その疾患の特性と長期間におよぶ経過観察が必要であるため、十分な知識と経験をもった頭頸部癌を専門とする医師が担当にあたっています。 - 運動誘発性喉頭閉塞症(EILO)外来(火曜日)
運動誘発性喉頭閉塞症(EILO)外来では、運動中の喉頭をリアルタイムに観察するCLE検査を行い、診断と治療を行います。EILOは運動時の強い吸気により喉頭が狭くなる疾患ですが、CLE検査で患者さんもご自分の喉頭をリアルタイムに観察することができるため喉頭の動きを理解しやすいと思います。呼吸療法で改善しない場合は入院の上、全身麻酔下で手術を行います。治療後も定期的に専門外来で観察していきます。EILOは日本ではまだ認知度が低い疾患であるため、運動誘発性喘息や過換気症候群と診断されていることが多い疾患です。当科では日本で最も多くの治療経験を持つ医師が担当し、診断治療にあたります。シュノーケル使用が関連したEILO競泳選手の術後経過を示します。これについては既に論文で報告しています。
- 中耳炎外来(水曜日)
中耳炎外来では、小児の中耳炎の中でも主に反復性中耳炎、遷延性中耳炎、乳幼児中耳炎、滲出性中耳炎といった治り難い中耳炎を対象とした診療を行っています。急性中耳炎は幼小児期における代表的な感染症であり、生後3歳までに約70%の小児が少なくとも1回は罹患するとされます。中耳炎の診療においては、中耳すなわち鼓膜の状態を十分に観察することが重要で、内視鏡を用いた鼓膜の詳細な診察をおこない、保護者の方と一緒に確認しながら治療方針を説明しています。また、幼小児期の中耳炎の難治化に対しては、抗菌薬治療のみでなく、鼓膜切開や鼓膜換気チューブの挿入などの外科処置がきわめて重要となります。当外来では、全身麻酔下での安心した鼓膜換気チューブ留置のほかに、炭酸ガスレーザーを用いた鼓膜切開を行なっています。とりわけ、炭酸ガスレーザー(OtoLAM®)による鼓膜切開は、外来で短時間で行う事ができ、傷跡の治癒が良好であることから、鼓膜の再生を考えた鼓膜に優しい新しい外来外科治療といえます。中耳炎外来では、子供たちの中耳炎の難治化の要因を探求するとともに、子供とも一緒に歩める、より良い中耳炎治療を目指しています。 - 人工聴覚機器外来(水曜日)
人工聴覚器外来では、様々な原因で難聴になった方に対し、人工聴覚器の適応を判断するとともに、人工聴覚器を手術的に植え込んだ方の聴覚管理を行っています。人工聴覚器の代表である人工内耳は、現在世界で最も普及している人工臓器の1つで、高度な難聴があり補聴器での装用効果が不十分である方に対する唯一の聴覚獲得法です(図)。先天性難聴のお子さんから加齢性難聴の方まで、幅広い年代の方が使用されています。また、中耳炎などで音の伝わりが障害された伝音難聴の方には、特殊な植込み型補聴器や人工中耳が適応となります。人工聴覚器は、その効果に個人差があり、また手術直後から完全に聞こえるわけではありません。そのため、術後は人工聴覚器外来で言語聴覚士とともに、しっかり訓練(リハビリテーション)することが大切です。
日本耳鼻咽喉科?頭頸部外科学会HPより引用 - 顔面神経麻痺外来(水曜日)
顔面神経麻痺外来では、顔面麻痺の原因およびその程度を電気的な刺激試験(ENoG)などにより詳細に検査し、早急に治療方針(点滴治療か手術的治療にするか)を決定しています。経験豊かな医師によるリハビリテーション、また、後遺症に対するボツリヌス毒素治療も行っています。 - 小児難聴外来(木曜日)
小児難聴外来では、新生児聴覚スクリーニングや乳幼児健診で難聴を疑われたり、生活の中で難聴が疑われたこどもに対して、検査と治療をおこないます。乳幼児では通常の聴力検査はできませんので、年齢の応じた検査をおこないます。また他覚的検査として聴性脳幹反応(ABR)、聴性定常反応(ASSR)を行います。聴力が確定すれば、必要に応じて補聴器をあわせます(フィッティング)。またこの時期は言語発達に重要な時期なので、ろう学校と協力して言葉の発達を促す訓練をおこなっています。補聴器でも聞き取りや言語発達が難しい重度難聴のこどもには人工内耳植込み手術をおこない、術後に聞き取りや言語発達訓練をおこないます。 - 甲状腺外来(木曜日)
甲状腺専門外来では、主に甲状腺の良性腫瘍、甲状腺癌といった腫瘍性疾患を診療しています。超音波検査(エコー検査)、超音波ガイドした穿刺吸引細胞診、CT、PETなどを用いて甲状腺にできた腫瘍を詳しく調べます。手術加療が必要な場合には、入院の上、甲状腺腫瘍の手術を行っています。当科では甲状腺腫瘍の手術を数多く行っており、術後成績も良好です。その他にもバセドウ病、橋本病などの疾患、副甲状腺腫瘍や機能異常に対しても詳しい検査や治療を行っています。 - 嚥下外来(金曜日)
「食べ物や飲み物がうまく飲み込めない」「食事中によくむせる」「誤嚥性肺炎を繰り返している」――そんな嚥下(えんげ)の問題に対し、当科では嚥下内視鏡検査(VE)を中心とした専門的な評価と治療を行っています。
- 嚥下内視鏡検査(VE)とは
鼻から細い内視鏡を挿入し、実際にゼリーなどを嚥下する様子を直接観察しながら、咽頭や喉頭の動き、誤嚥の有無、喉の機能を直接評価する検査です。 - 当外来の特徴
- 嚥下内視鏡検査(VE)を全例に実施し、症状の原因を正確に把握
- 頭頸部がん術後や神経疾患、加齢による嚥下障害にも幅広く対応
- こんな症状がある方はご相談ください
- 食事中によくむせたり咳き込んだりする
- 飲み込みにくさや喉のつかえ感がある
- 誤嚥性肺炎を繰り返している
- 胃瘻?経管栄養から経口摂取に戻したい
- 「食べること」は、体と心の健康を支える基本です。嚥下に不安を感じている方は、嚥下内視鏡を用いた精密な診断と適切なリハビリが可能な嚥下外来にぜひご相談ください。
手術件数
主な手術件数は以下の表の通りです。(2021年度)
手術名 | 件数 |
---|---|
耳疾患手術 | 125件 |
口腔?咽頭手術 | 127件 |
喉頭?気管?食道手術 | 166件 |
鼻副鼻腔手術 | 102件 |
甲状腺上皮小体手術 | 113件 |
唾液腺手術 | 47件 |
頸部?その他 | 134件 |